求人代行サービスなど、あらゆる手段を使ってやっと採用できた求人は、長く働いてほしいですし採用した人材への期待も大きいでしょう。
しかし、日々の業務をこなしていると、歯科スタッフの意欲が下がってきているのではないか?と感じることはないでしょうか。
日常業務をこなすだけでは、モチベーションの維持は困難になってきます。業務意識を高く維持し、さらに技術力の向上を図るのに良い例として、歯科衛生士に目標を設定させるという方法があります。
今回は、歯科衛生士が目標を設定した方がいい理由を、具体例を挙げながら見ていくとともに、細かい目標の設定例なども併せて解説していきましょう!
歯科衛生士に目標設定が必要な理由
歯科衛生士を含めた歯科スタッフが、目標を設定することには明確な意義が存在します。
年始や年度初めには、どこの会社や医院でも売り上げ目標や達成すべき課題を設定するように、その一年の行動の指針を図るものとして必ず必要だからです。目標を設定することによって、ゴールを擬似的に作り出しそれを達成するモチベーションを生み出すでしょう。
医院では院長や、経営担当者の方だけではなく歯科スタッフまで目標を持つことによって、目標達成のために自分で考え責任感を生み出すことにもなり、達成感や本人のスキルアップになるはずです。
そして、その目標を共有することにより、院内の雰囲気やコミュニケーションの改善も図れ、院内業務の効率化やより良いサービスの提供につながると考えられます!
歯科衛生士の目標設定で注意すべき5つのポイント
では、歯科衛生士の目標設定としては、何か注意点はあるのでしょうか?
自身のスキルに関することや、接客・電話対応などの品質、院内の環境といった衛生的なものなどなど、目標として設定できるものは数多くあります。しかし、効果が検証できなかったり「常に笑顔で接客」のような漠然としたものは、目標として設定するべきではないでしょう。
ここでは、歯科衛生士が目標設定で注意すべき5つのポイントを見ていくことにしましょう。
実現可能で現実的な目標にする
目標を設定する際のポイントのひとつに、実現可能で現実的な目標にするといったものがあります。
その理由として、実現不可能な目標を設定しては目標に対してのやる気は起こりませんし、現実的な目標でなければ目標を設定する意味がありません。そのためには、「SMART」に基づいて目標を設定するのが良いとされています。
- 具体的な目標(Specific)
- 測定可能な目標(Measurable)
- 達成可能な目標(Achievable)
- 関連性が高い目標(Relevant)
- 期限が明確な目標(Time-bound)
上記の「SMART」に基づいて、経験やスキルなどに根差した現実的な目標を、実現可能な範囲で設定することがポイントになると言えます。
スキルやキャリアに見合う難易度の目標を設定する
スキルやキャリアに見合った難易度を設定するのも、重要なポイントと言えます。
新人歯科衛生士の具体例では、「ブラッシングの指導ができるようになる」や「器具の名前を覚える」など、まずは基礎知識を習得できるような目標を設定してみましょう。
ベテランの具体例では、そこから更に高めに目標を設定し、「特定の症状や、患者様の状態に沿ったブラッシングやコツが指導できるようになる」としたり、「患者様の既往歴や基礎疾患に基づいた口腔ケアの指導ができるようになる」などさらに専門性の高い目標を立てることによって、スキルアップを図れる可能性もあります。
歯科医院のコンセプトと一致している目標にする
歯科医院のコンセプトと一致している目標であることも、重要なポイントのひとつです。理由として、コンセプトに沿った目標を設定しなければ、医院と違う方向性になってしまい、目標を設定する意味がなくなってしまうからです。
予防歯科であれば、口腔内環境をより適切に保つ指導ができるような目標を設定したり、審美歯科であれば口元の印象から考える最適なホワイトニング指導ができるなど、コンセプトに沿った目標でなければ、ちぐはぐなことにもなりかねません。
医院のコンセプトを踏まえた上で、スタッフが同じ方向性で仕事をし目標を設定することは、サービスの質の向上や経営に良い影響を与えることにつながると考えられます。
目標には曖昧表現を入れないよう注意
目標に対して曖昧な表現を入れてしまうと、目標自体の効果測定が難しくなってしまいます。
例を挙げると「努力する」「頑張る」「なるべく」「協力する」などが目標の文言に入っていると、個人的な基準に基づいていたり目標達成の確認が困難になります。そのため、より具体的に目標を設定し、努力する・頑張るなどは「いつまでに・どのくらい・どのような形式で」と置き換えて考えると、より曖昧な表現を避けることに繋がります。
「SMART」を満たす目標にする
ただ漠然と目標を設定するのではなく、以下のようにテーマを設けてその項目に対して目標を設定するといいでしょう。
- 治療技術やスキル:基本的な技術や知識、処置方法や薬剤・器材といった専門的な事柄に対する項目。
- 日常業務:事務処理・受付・電話対応などの日常業務や機材の準備や清掃に関する業務に関する項目。
- 態度やメンタル:マナーや身だしなみ・挨拶といった社会人としてのあるべき心構えに関する項目。
- コミュニケーションや接遇:患者様への説明や受付での対応の際の、コミュニケーションに関する項目。
- 他スタッフとの連携やチームワーク:他のスタッフとの連携や情報共有などの、組織内に関する項目。
そして曖昧な表現を避け、より具体的な目標を設定するために「SMART」を満たす目標にするのが良いとされており、以下の目標に対して「SMART」を当てはめた具体例を挙げてみます。
- 「来院した患者さんがより満足できる医院にする」
・患者様に満足度アンケートを配布
・来院した100名に集計した結果から改善できそうな点をピックアップ
・四半期までに
・院内の基本理念に基づく- 「クリニック内を清潔に保つ」
・クリニック内の清掃を実施
・毎朝15分間
・清掃記録表に記載
・毎日
・院内衛生基準に基づく- 「治療技術を向上させる」
・院内勉強会を実施
・毎月レポートを作成
・翌月までに提出
・技術向上の基準に基づく
この例のように、ざっくりした目標から「SMART」の基準を満たしていくと、より詳しくはっきりとした目標が見えるよううになっていきます。
歯科衛生士の目標設定の具体例
それでは、歯科衛生士の目標設定の具体例にはどんなものがあるのでしょうか?
ここでは、6つの項目に関して目標例を挙げていますが、先に述べているように「SMART」を満たしてより内容を具体的にしていくことが重要です。そして、何のためにこの目標に取り組むのかを明確にし、その目標を達成した時の結果を具体的にイメージできるような目標設定が重要な鍵になります。
それではひとつひとつの項目に関して、例を挙げて見ていくことにしましょう。
治療技術やスキルに関する目標例
基本的な技術や知識、薬剤・器材といった専門的な事柄に対して目標を設定します。
目標例
「毎月1回院内勉強会を開催し、その成果をレポートにまとめ提出する」
「治療の流れや使用機材をまとめた詳しいマニュアルを年度内に作成する」
「技術向上のための自主練習を毎日10分間行う」
スキルや技術の向上は、治療の際に端的に活かせるようになり、歯科医師に対しての適切なサポートや業務スピードの向上などが期待できます。
事務処理など日常業務に関する目標例
事務処理・受付・電話対応などの日常業務のほか、機材の準備や清掃に関する一般的な通常業務に関して目標を設定します。
目標例
「受付周りや、待合室の清掃を毎日行い、清掃記録表に記載する」
「治療のスムーズな移行のため、患者様がわかりやすい資料を年度内に作成する」
「顧客満足度向上のために、アンケートを作成しその内容を四半期ごとに集計する」
日常業務に関する目標では、日々の業務の見直しや業務ルーティーンの効率化などが期待でき、業務の負荷を低下させることができるかもしれません。
態度やメンタルに関する目標例
マナーや、身だしなみ・挨拶といった一般社会人としてのあるべき心構えに関して目標を設定します。
目標例
「笑顔で挨拶を実施するため、毎朝の朝礼で交代制で挨拶練習をする」
「ロッカールームに姿見と身だしなみチェック表を設置し、毎日チェック後相互確認をする」
「四半期ごとに院内マナー勉強会を開催し、マナーマニュアルを作成する」
気持ちの良い挨拶や態度は、患者様だけでなくスタッフ間の関係も円滑にすることが期待できます。
患者への対応や接遇に関する目標例
患者様への説明や受付での対応の際の、接遇やコミュニケーションに関して目標を設定します。
目標例
「半期ごとに接遇マナー講習会に参加し、その成果をレポートとして提出する」
「耳の遠い方でもわかりやすいような話し方の自主学習をし、話し方勉強会を開催する」
「適切なクレーム対応を学ぶ講習会に参加し、受付に対応マニュアルを設置する」
クレームやイレギュラーな対応は、慣れていないと大変苦労します。その際にマニュアルや自主学習で学んでおけば、心の余裕が生まれスムーズに対応できるようになるでしょう。
他スタッフとの連携に関する目標例
業務の流れや用語、治療の進め方や情報の共有など組織内のチームワークに関して目標を設定します。
目標例
「患者様の現在の状態を把握するためにヒアリングシートを作成し情報共有を図る」
「業務日誌を作成して情報の共有を図るとともに毎月スタッフミーティングを開催する」
「手が空いたら他のスタッフへ声かけを行い、手伝ったら『サンクスカード』を発行する」
ただその場の声掛けや会話ではなく、他でも情報共有がなされるように、日誌やシートを活用して書面などで情報が残るような形をとると、より共有しやすくなります。
処置や商品、保険等の知識に関する目標例
処置や商品、保険等の知識は歯科治療における基礎的な器材・薬剤の知識、治療の流れへの理解、保険診療に関して目標を設定します。
目標例
「診療内容ごとに使用器材・薬剤・治療手順のマニュアルを今季中に作成する」
「保険診療一覧表をわかりやすいグラフにして今年度中に作成する」
「治療材料注文一覧表を作成し、月単位で管理できるようにする」
保険診療の範囲など、一般の患者様にわかりにくい項目に関してグラフなどを用いて説明できると、より理解が上がり治療の次のステップにスムーズに移行できるようになる可能性もあります。
歯科衛生士の効果的な目標の管理・反省方法
目標を立てたのはいいですが、「その後に忙しさに忙殺され気がついたら一年経過していた・・・」というのでは、目標を設定する理由がなくなってしまいます。
やはり、目標を設定したのであればその目標を効果的に管理・検証し、歯科衛生士が積極的に目標に取り組める環境の整備というのも大切になってきます。
ここからは、設定した目標を管理・検証し、目標未達の場合の反省方法なども見ていくことにしましょう。
明確な目標管理シートの作成と活用
歯科衛生士が目標を設定したら、その目標に対しての取り組み具合や進捗状況を管理するのに、目標管理シートを作成することをお勧めします。その理由は、目標の取り組み状況や進捗を日々管理することにより、歯科衛生士自身が常に目標を意識し、達成までのプロセスや成長を見込めるからです。
目標管理シートを医院全体で共有すれば、達成に向けて適切なアドバイスや指導をすることができるでしょう。そして結果的に、歯科医院内のコミュニケーションの活性化にもつながります。
また、目標達成の度合いを確認できるということは、人事効果や査定で参考にすることができ、給与にも直接関わるのであれば、目標達成に対してのやる気も変わってくるかもしれません。
達成状況の定期的な確認&フィードバック
目標管理シートの作成活用だけでなく、先輩や上司からの定期的な確認やフィードバックもした方が良いでしょう。その理由として定期的に確認することによって、目標に対して定期的に意識を向けさせ、問題点があればそれを修正することも可能だからです。
フィードバックに対しては結果や現状の問題に対して具体的に伝えるようにしましょう。フィードバックが具体的でなく、問題をさらに考えさせることになると、意欲を低下させることに繋がりかねません。
モチベーションの維持や意欲を維持させるために目標を設定しているので、あくまでプレッシャーを与えるような形にならないように慎重な配慮が必要となります。
目標達成のサポートや機会の設置
歯科衛生士が設定した目標を、歯科医院全体で共有することは、目標を個人の努力だけに終わらせず、その目標達成を通して組織全体で成長していくことを目的としています。そのためには、目標達成のためのサポートや報告などの機会が重要になってきます。
定期的な目標達成報告会を開催して歯科医院全体で進捗を確認しあったり、朝礼などで毎日各人の目標を呼称するのも目標の確認としては有効です。
常に個人の設定した目標に意識を置いて業務を行うことで、組織全体の方向性を確認しパフォーマンスに繋げていくことができるかもしれません。
歯科衛生士の目標設定でよくあるQ&A
歯科衛生士が目標を設定するのは難しいことではありませんが、それを1年や半年といった長期で維持管理していくに中では、さまざまな問題が出てくることでしょう。場合によっては状況が変わり、目標そのものの理由が無くなることもあり得ます。
そのような時にはどのように対処したらいいのでしょうか?ここからは、目標設定の際によくある問題点や疑問をQ&A形式で見ていくことにしましょう。
Q: 目標はどのくらいの期間で設定すべきですか?
A:目標の設定には、一般的に年始や年度始めに設定することが多いため、半年から1年の期間で設定することが多いようです。毎月目標を設定していては、日常業務に忙殺され目標を考えるだけで精一杯という状況が容易に想像できます。そのため、ある程度のスパンを置いて期間を設定することが望ましいと考えられます。
しかし「長期目標を立てると気が緩むのではないか」と考えている方には、スモールステップの概念を導入してみてはいかがでしょう。
長期の目標を細分化して、細かいゴールを設定する方法で、目標達成までの長い過程を短く区切って小さな目標にすることで、モチベーションの維持がしやすく問題点や疑問点に気づきやすくなります。
長期的な目標に対しての意欲を低下させず、細かく成果が確認できることでモチベーションを維持する方法として、現在注目されている概念です。
Q: 設定した目標を変えてほしい時は?
A:歯科衛生士が設定した目標を変えて欲しい時に、上司や先輩が目標を勝手に決めてしまった場合、自分のペースで目標を設定したい歯科衛生士に対しては反発を受ける可能性があります。また自発的でない目標は「やらされている感」が出てきてしまい結果的にはモチベーションが低下し、これでは目標設定の理由がありません。
例を挙げれば「遅刻をしないようにする」など、個人的で幼稚な目標だとさすがに問題がありますが、そうでなければ目標の変更を本人と話し合い、慎重に判断するべきではないかと考えます。
変更に際しては医院の基本理念に則しているかや、方向性を鑑みた上で上司や先輩が目標を勝手に変更せず、自分で考えて設定することが重要で、それが目標設定の基本理由であるからです。
Q: 目標の進捗はどのように管理すべきですか?
A:目標の進捗管理には、目標管理シートなどを作成し歯科医院全体で共有できるような仕組みが望ましいです。しかし、中には進捗が思うように進まず、目標が達成できないこともあります。
その際に、目標管理シートなどで共有していれば、進捗が滞っている人物に対するサポートや声掛けなどもでき、アドバイスを与えることによって課題をクリアできるかもしれません。このように、目標を共有することは目標設定した人物の管理をするという意味合いではなく、医院全体でサポートや声掛けをするためのツールとして使用することを目的としているのです。
Q: 目標設定の際に参考にできる資料はありますか?
A:「臨地実習指導マニュアル」がおすすめです。歯科診療の際に学生に指導するために作成されたマニュアルですが、臨地実習と歯科診療における目的や目標が細かくマニュアル化されており、歯科衛生士の目標設定をする際に大変役立つ資料になっています。
また、新人教育時のチェックリスト作成・活用方法などの記事も目標の設定時には大変参考になります。これらの資料を歯科衛生士に提示して、自発的に目標設定をしてもらうように促しましょう。
参考URL
「歯科衛生士の新人教育を成功させる!効果的なチェックリストの作成と活用法」
歯科衛生士の成長する目標設定とは
歯科衛生士が目標設定をする意義や理由を、具体例を挙げながら解説してきました。
例えばどこの会社や組織でも年始や年度始めには目標を設定するように、歯科衛生士や歯科スタッフにも目標を設定させることで、モチベーションの維持に繋がり、責任感や職業意識を生み出すことになるでしょう。そして目標設定は、あくまで自発的に設定することが重要であり、勝手に目標を設定され「やらされている感」を感じてしまうと、モチベーションの低下という逆効果になることもわかりました。
目標のポイントとしては「SMART」を満たすように設定し、現実的で実現可能な目標をいつまでに・どのくらい・どのようにという風に具体的にすることも重要であり、長期的な目標に対してはスモールステップの概念を導入してよりモチベーションを維持できるような方策を取りましょう。
そして歯科衛生士や歯科スタッフが、目標を達成できた時にはサービスの向上や、院内環境の改善に繋がり歯科医院全体がより良い方向性に向かっていくのではないでしょうか!
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